自転車事故に遭わないために!Trekから学ぶロードバイクの安全な走り方
近年、ロードバイクへの関心の高まりと同時に、自転車事故防止が注目を集めています。特に自転車メーカーや販売店は、過去に例がないほど安全性の話題をピックアップするようになりました。
そこでこの記事では、どうすればサイクリストは事故を未然に防げるか、ということについて、トレックが提唱しているコンセプトを基に一緒に考えてみたいと思います。
1.サイクリストの勘違い
自転車に乗っていてクルマに撥ねられた人の多くは「ドライバーが自分の存在に気付いていると思っていた」と語ります。しかし、実際はサイクリストが期待するほど、クルマから自転車は見えていません。とある統計データでも、「サイクリストは、自分が車道で他の車両から認識されていると誤解している確率が高い」としています。
アメリカのクレムゾン大学に籍を置く視覚認知の専門家リチャード・ティレル博士と知覚的アウェアネス学科の学生による研究結果も、同様の結論に至っています。「積極的に体を動かすなどしない限り、サイクリストはほとんど視認されることはない。しかし、多くのサイクリストは、自身がドライバーから視認されていると大きく誤解している」と、発表しています。
2.ABCコンセプト
トレックはリチャード・ティレル博士の研究データを元に、事故の予防対策としてガイドラインを作成しました。それが「ABCコンセプト」です。簡単に言えば、視認性を高めるためには
- 「日中も点灯」
- 「体の動きを目立たせる」
- 「背景との対比」
の3つの心がけが、それぞれ「良い」「より良い」「最も良い」として示されていて、「日中点灯用ライトを用いるのは視認される良い方法ではあるが、それだけでなく、同時に体の動くパーツを目立たせ、背景との対比を強めることが最も効果的である」というものです。
2-1.安全のABCコンセプト「A」
安全のABCコンセプト「A」は、「Always,on」です。
昼でも夜でも前後にライトを点けよう、という意味です。
統計によると、自転車事故の約8割は日中に起きていて、その中でも後方からの追突による死亡事故は約4割にも上ります。そのため、昼間点灯(Daytime Running Lamps:略して「DRL」とも)は、サイクリストが自分の存在をアピールするには非常に良い手段です。
そもそも、サイクリングは自動車業界がとても良いモデルとなっています。サスペンションやディスクブレーキなどは自動車などモーターサイクルから着想を得ています。そして、自動車のデイライトは、1970年代から被視認性アップによる交通事故防止に繋がるとして世界中で研究が始まり、スウェーデンをはじめとするスカンディナヴィア諸国から世界に拡大。2011年にはEUでもデイライト装着が義務化となりました。
しかし、どんなライトでも効果が期待できるわけではありません。高輝度を誇るライトでさえ、日中はそれほど効果がないこともあります。日中点灯用ライトにおいて重要なのは、「専用のフォーカス」「フラッシュ」「レンジ搭載」です。これら3つを備えていなければ、ただのライトに過ぎず効果は期待できない、とトレックは記しています。
2-2.安全のABCコンセプト「B」
安全のABCコンセプト「B」は、「Biomotion(バイオモーション)」です。
体の動くパーツを目立たせよう、という意味です。
人間の目が止まっているものより動いているものの方が認識しやすいのは周知の通りです。
また、人間の脳は生物の形を一瞥しただけで、それが生き物であると認識できる不思議な力を備えています。これは「体の動きに対する感度」と呼ばれる本能的な知覚能力と言われており、私たちは他の人間を認識することが得意な生物です。
ライド中のペダリングの上下運動は、それが人間特有の動きであると気づかせる特有の動作です。そのため、足周辺部分に蛍光カラーなどを採用した目立つアイテムを用いれば、サイクリストの存在をアピールすることが可能です。
夜間は反射性素材を用いた製品により、つま先までの脚全体の動きを強調させることがお勧めです。そして、日中は蛍光色のソックス・シューズ・シューズカバー・ウォーマーなどの着用がお勧めです。
2-3.安全のABCコンセプト「C」
安全のABCコンセプト「C」は、「Contrast(コントラスト)」です。
背景との対比、という意味です。
被視認性はコントラスト、つまり背景との対比に依存します。したがって、日中には蛍光カラーのウェアなどを身に付けることで事故に遭遇する危険性を減らすことができます。が、太陽が出ていなければ、蛍光色のアパレルはまるで効果を発揮しません。そこで、夜間には反射材(リフレクター)の付いたバーテープやヘルメットを装着することで被視認性を向上させ、事故のリスクを低減することができます。
3.ヘルメットの重要性
3-1.ヘルメットは必要
サイクリングの安全対策の一つが、ヘルメットの着用です。
オートバイは法律によりヘルメットの着用が義務付けられていますが、自転車には着用の義務はありません。しかし、クロスバイクやロードバイクはかなりのスピードで走行することもあります。そのため、ヘルメットは決して不要とは言えないでしょう。
自転車は、道路交通法においては車両の一種で、広義には軽車両に分類されます。本来なら自転車はクルマと同様にルールを守る必要がある乗り物です。しかし、一般的にはそのような意識は浸透しておらず、そうした背景もあって自転車の事故は全国で多発しています。警視庁の発表によれば、平成28年の自転車事故の発生件数は全国で約9万3千件。年々減少傾向にはあるものの、この数字は全事故件数の2割程度に相当し、自転車が関わる事故は毎日およそ250件も起きている計算になります。
このように、サイクリングには多かれ少なかれリスクを伴います。したがって、頭を守るヘルメットは必ず装着するようにしましょう。
3-2.MIPS
トレックはヘルメットにおいても最新技術を導入しており、事故防止だけでなく、万が一の際の衝撃を最小限に抑える技術も進化させています。その一つが、トレック・ブランドの一つボントレガーが開発したMIPS(ミップス)です。
MIPSとはMulti-directional Impact Protection Systemの略で、「頭部の保護機能を強化する防護システム」の略称です。特徴は大きく三つあります。
一つ目が、MIPSは脳にならった防護システムであるという点です。
MIPSは脳が本来持つ防護性を模倣し、ヘルメットのアウターシェルとインナーライナーとの間に低摩擦性の層(レイヤー)を付加しています。
二つ目は、低摩擦性の層です。
MIPSヘルメットはアウターシェルとインナーライナーとの間に低摩擦性のレイヤーを設けていて、ヘルメットが衝撃を受けた時には、外層と内層とが滑り合うことで(ヘルメットの内層と外層がわずかに回転することで)頭への衝撃を減少させます。
三つ目は、斜めからの衝撃に対しても高い保護性が提供できる点です。
従来のヘルメットの製品テストは、平坦な面へ垂直にヘルメットを落下させるだけでした。しかし、MIPSヘルメットは実際の事故状況で起こりうる、斜めから頭部への衝撃に対応するよう設計されています。
4.トレックが第一に考えること
トレックは国際的な自転車メーカーとして、いくつかの基本方針を謳っています。
一つが「Raced to win」。勝利のためにレースを戦う、です。
トレックのエンジニアやデザイナーは、素材を始めとする全ての要素に疑問と好奇心を抱き、レースを勝利に導くことにとても情熱的です。
一方で、「Loved the world over(全世界で愛される)」をスローガンに掲げていて、自転車インフラ整備のための支援活動団体People For Bikesを支え、自転車の世界への恩返しとしてトレック全利益の4%を還元しています。
しかし、トレックが最も大切にしている方針は「Warrantied for life 」、つまり「生涯補償」です。(ちなみに、1976年につくられた最初のフレームも、今なお生涯保証の対象です。)
トレックは明快に約束しています。「世界一過酷な品質テストを行い、永く愛されるバイクをつくり、業界でもっとも信頼される生涯保証を提供する」と。そして、こう断言しています。
「トレックはライダーの安全と安心を第一に考え、自分たちが正しいと信じることを行っていく」。
そうです。トレックが最も大切にしているのは、ライダーの安全と安心なのです。
速さより、愛されることより、まずは安全が第一だと、世界最大級の自転車ブランドはそう断言しているのです。
そして、トレックブランドの一つボントレガーもまた、「乗り手の安全こそ最優先。その信念が製品を進化させる。」をコンセプトに掲げており、ここからもトレックがどれほど安全性に注力しているかがわかります。
だからこそ、私たちはトレック愛用者か否かに関わらず、自転車業界の発展に尽力しているトレックに敬意を払う意味で、安全にサイクリングを楽しむことが重要だと考えます。
5.まとめ
トレックは安全性を非常に重要視しています。そして、安全にロードバイクを走らせるために「ABCコンセプト」を提供しています。
「Always,on」。
昼でも夜でも前後にライトを点けよう。
「Biomotion(バイオモーション)」。
体の動くパーツを目立たせよう。
「Contrast(コントラスト)」。
背景と対しさせよう。
これらを守りながら、安全にサイクリングを楽しみましょう。
怪我があってからでは手遅れです。
皆さんが事故に巻き込まれることなく、楽しいロードバイクライフが送れることを心より祈っています!